むくみとは

むくみ(浮腫)は、体外に排出されず体内に残った水分や老廃物が皮膚の下に溜まった状態を指します。

身体がむくむと腫れぼったい外見に悩まされるだけでなく、だるさや痛みによって日常生活に支障をきたす恐れがあります。
むくみが起こる背景には病気が隠れているケースもあり、「たかがむくみ」と放置していると、重篤な体調不良に発展してしまう可能性もあります。

むくみは血行不良や塩分の取り過ぎ、運動不足、ホルモンバランスの乱れなど、さまざまな原因によって誰にでも起こりうる症状ですが、正しい知識のもと早めに対処すれば悪化を予防できます。

むくみの症状

むくみは、細胞と細胞のあいだに過剰な水分が停滞した状態です。

人間の体内にある水分は、細胞内に含まれる細胞内液とそれ以外の細胞外液に分類されます。
細胞外液には体中を循環している血液やリンパ液のほか、細胞と細胞のすきまを満たしている細胞間液などがあります。

むくみの仕組み

身体に必要がない水分や老廃物は、血液によって静脈やリンパ管に運ばれたあと尿として排出されます。

ところが血流が停滞したりリンパ管が圧迫されたりすると、水分や老廃物の運搬が妨げられて体内に留まり、むくみとして現れます。

むくみの分類

「むくむ」といっても、症状はひとつではありません。

むくみは、身体の左右両側(全身)に生じる場合には全身性または両側性といい、身体の片側や一部分で起こるのは局在性または片側性と区別します。

むくみの特徴によっても分類があり、むくんでいる部分を指で5~15秒ほど押して痕がついてなかなか戻らないものを圧痕性、痕が残らないときには非圧痕性と呼びます。

全身性
(両側性)
局在性
(片側性)
圧痕性 腎性浮腫
(ネフローゼ症候群)
深部静脈血栓症
(エコノミークラス症候群)
非圧痕性 粘液水腫
(甲状腺機能低下症)
血管性浮腫
蕁麻疹(アレルギー反応)

むくみの原因や症状は多岐に渡るため、症状を改善するためには自分の身体で何が起こっているのかを正確に知る必要があります。

とくに病気の影響でむくみを生じている場合には、医師の指導のもと適切な治療を行なうことが先決です。
仕事や食習慣などの日常的な要因でむくんでいる場合には、セルフケアで予防・改善を目指すことができます。

むくみの原因

むくみは、細胞と細胞のあいだに余分な水分が溜まっている状態。
身体がむくんでしまうのは、水分の排出がうまくできていないからです。

また、何度もむくみを繰り返す場合には遺伝性の疾患である可能性もあります。

むくみの原因は?

・体内に水分が停滞してしまう
・遺伝性の疾患がある

特に、体内に水分が溜まってしまう原因はさまざま。年齢や体質、ライフスタイルなどによって異なるだけでなく、複数の原因が重なってしつこいむくみに繋がっている場合もあります。

長時間同じ姿勢でいる

何時間も座り続けていると、血管やリンパ管が圧迫されて水分や老廃物が停滞しやすくなります
また立ちっぱなしでいると、重力の影響で下肢に水分がたまりやすくなります。

筋肉の量が少ない

筋肉は、静脈を圧迫して全身に血液を巡らせるポンプの役割を持っています。
とくに、脚部の筋肉は重要です。全身を巡っている血液を心臓へ押し戻すことから、ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれるほど。

しかし脚部の筋力が不足しているとポンプとしての働きが弱く、上半身へ向けて血液を巡らせることができません。
重力が働いているため、どうしても体内の血液は下肢に停滞してしまいがち。
筋肉量が不十分な人は血流が滞りやすく、流れの悪い血液から水分が細胞へと染み出してむくみを生じます

ホルモンバランスの乱れ

むくみの症状が男性と比べて女性に多くみられるのは、ホルモンバランスの変動による影響があります。

エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの分泌量が増減すると、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスに影響をきたします。
血管の収縮と拡張を司っている自律神経がうまく機能しないと、血行不良を引き起こしやすくなります。

またプロゲステロンの分泌量が増加する月経前は、体内に水分を溜めこみやすい状態。
毎月のように月経を迎える女性は、どうしてもむくみに悩まされる機会が多くなってしまいます。

水分・塩分の摂りすぎ

人間の身体には、体内の塩分濃度を一定に維持する働きが備わっています。
しかし塩分を多く含む加工食品や惣菜などを食べる機会が多いと、塩分の摂取過多に。
身体は体内の塩分濃度を薄めるために水分を溜めこむので、むくみが起こりやすくなるのです。

塩分の多い食事を好む人は、常に水分を溜めこんでいる状態=いつでもむくんでいる可能性があります。

ほかの病気

何らかの病気の症状として、むくみを生じるケースもあります。

血管やリンパ管の異常が原因のため、むくみの解消だけに目を向けるのではなく、病気そのものの治療を行わなくてはいけません。

血管内の静水圧上昇

血管内の水分が増え過ぎたり静脈の流れが悪くなったりすると、静脈の血圧が上昇して血管から細胞へ染み出る水分が増えてしまいます。

心不全、腎不全、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、子宮筋腫 など

血管内の浸透圧低下

血液中の栄養分が減少すると、血管の中に水分を維持するための力(浸透圧)の低下を招きます。

浸透圧が下がると血管内に水分を留めておくことが難しくなり、血管外へ出ていく水分の量が増加します。

栄養不足、肝硬変、ネフローゼ症候群 など

血管透過性の上昇

体内物質が血管と血管外を行ったり来たりすることを血管透過性と表します。

病気の影響で血管内に血液を保つことが難しくなり、血管外に水分が出ていきやすくなってしまいます。

膠原病、内分泌疾患 など

リンパ管の閉塞

リンパ管を取りのぞく手術を行なった人や放射線治療を行なっている人は、リンパの流れが滞りやすくなります。

リンパ浮腫

薬の副作用

医薬品によっては、副作用としてむくみを生じることがあります。

つらいむくみが続く場合には、治療薬の量を減らす・薬の種類を変更するといった対策が検討されます。

むくみが出やすい医薬品

抗がん剤
非ステロイド性抗炎症薬(解熱鎮痛剤)
カルシウム拮抗薬(高血圧、狭心症、群発性頭痛の治療薬)
ACE阻害薬(高血圧治療薬)
抗生物質(感染症治療薬)

むくみを繰り返す遺伝子

むくみは生活習慣や体質・体調の変化など後天的な要因で起こることがほとんどですが、むくみをくり返しやすいという場合には遺伝性血管性浮腫=Hereditary angioedema(HAE)という疾患の可能性があります。

遺伝性血管性浮腫は、生まれつき血液中のC1インヒビター(たんぱく質の一種)が少ないために発症します。
C1インヒビターはむくみの原因であるブラジキニンの量を調整する働きをもっていますが、量が少なく活性が弱いとブラジキニンが優位に。そのせいで、むくみが起こりやすくなってしまうのです。

遺伝性血管性浮腫は治療できる病気です。
繰り返すむくみに悩まされている人は医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

むくみの予防・改善

むくまないためには、水分・老廃物を溜め込まない体作りが基本。
またむくんでしまったら、放置せずに早い段階で適切なケアを行なうことが必要です。

むくみ予防・解消のポイント

・血流の良い体作り
・できたむくみは早めにケア

むくみは、身体の内側と外側からのアプローチによって改善できます。

ちょっとした体調の変化に気づき、症状に合わせて身体をねぎらうことで、見た目にスッキリと美しく健康的な体を目指しましょう。

むくみの予防方法

むくみ予防で重要なのは、血液の巡りを滞らせないことです。
血行がスムーズであれば細胞間に余分な水分が停滞することはなく、むくみが生じにくくなります。

また過剰な水分を溜めこまないことも大切。
水分の摂取量はもちろん、塩分やたんぱく質といった栄養素の摂取バランスも、水分を溜めこまない体作りのポイントです。

適度な運動や入浴を習慣にする

筋肉の量が少ない人は血液を循環させるポンプの役割が弱いため、むくみを生じやすくなります。
また長時間同じ姿勢で過ごさずに身体をほぐして血流の停滞を解消するという点でも、普段から軽い運動を心がけることが大切。

入浴も、血流促進に有効です。余分な水分・老廃物の排出がスムーズになるほか、水圧によるマッサージ効果も期待できます。

こまめに水分を摂る

むくみ=余分な水分が溜まった状態。だから水を飲む量を減らそう…と考えるのは間違いです。
水分の摂取量が少ないと、不足分を補おうと身体は水分を溜めこんでしまいます。

むくむことを気にして水分の摂取量を減らすより、少量でもこまめに水分補給することを心がけましょう。

タンパク質、ビタミンB群、カリウムを摂る

たんぱく質には血管内および外の水分量をコントロールする働きがあり、ビタミンB群は水分の代謝促進と全身の水分バランスをキープする作用を持っています。

またカリウムは余分な水分の排出を助けるので、むくみやすさを感じている人は意識的に摂りたい栄養素です。

たんぱく質を多く含む食材

肉、魚、卵、牛乳、チーズ、豆腐、納豆 など

ビタミンB群を多く含む食材

レバー、バナナ、ナッツ類、カツオ、まぐろの赤身 など

カリウムを多く含む食材

アボカド、きゅうり、バナナ、里芋、メロン、ホウレン草 など

塩分を控える

人間の身体は常に一定の塩分濃度を保つよう働いているため、塩分を過剰に摂取すると濃度を薄めようと血管内に水分を溜めこみやすくなってしまいます。
溜まりすぎた水分は血管外へ染み出し、細胞と細胞のあいだに溜まってむくみの原因に。

ハムやソーセージといった塩分を多く含む加工食品や総菜を好んで食べる人は、塩分控えめで薄味の食事を摂るよう心がけてください。

むくみの改善方法

むくみの予防を意識しているにもかかわらずむくみを生じてしまった場合には、そのままにせず早めの段階でケアしておくことが大切です。

むくみを放置すると溜まった老廃物が脂肪に取り込まれ、セルライトを作ってしまうきっかけに。
セルライトの発生・増加によってさらなる血流の悪化が引き起こされるため、結果的にむくみやすい状態が続いてしまうのです。

むくみの解消方法は、即効性の高い手段やじっくりと時間をかけて行なう体質改善など、目的によって異なります。

利尿剤を服用する

利尿剤の服用は、むくみ改善にとってもっとも効果が明確で即効性の高い方法です。

利尿剤は高血圧の治療に用いられる医薬品で、尿量を増加させて水分や電解質を排出させる働きがあります。
身体にとって余分な水分だと判断されたのが尿ですが、身体に必要だと判断された水分までも排出するのが利尿剤の役割です。

体内に残すべき水分も排出する=余分な水分は一切残らない

強力なむくみ改善効果を発揮する反面、めまいや頭痛、倦怠感といった副作用には注意が必要です。

利尿剤の種類

ラシックス、ルプラック、アルダクトン、フルイトラン

漢方薬を服用する

漢方医学は中国から伝わり、日本で独自の発展を続けてきた医学です。

心と身体は一体であるという考えのもと、「気・血・水」のバランスを整えて自然治癒力を高める目的で用いられます。
むくみの原因はさまざまですが、むくみには主に「水」の働きを強める漢方薬を用います。

・五苓散(ごれいさん)
体内の水分量をコントロールします

・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
体力低下している人に用いられ、利尿作用によってむくみを改善します

・猪苓湯(ちょれいとう)
余分な水分を排出する作用があり、排尿障害を患っている人に用いられます

・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
体内に水分を溜めこみやすい、いわゆる水太り体質の人に適しています

セルフマッサージを行なう

むくみ改善マッサージは、むくんでいる部分を揉んでほぐすのではありません。
なでる・ほぐすことでリンパの流れを促進し、余分な水分や老廃物の排出を助けることが目的です。

脚のマッサージ

① ひざ裏や脚のつけ根などリンパ管が集まっている箇所をさすってほぐしておく
② 身体の末端(足先)から内側へ向かってさすり、リンパ液を流します
(ふくらはぎの場合は足首から膝へ、太ももは下から上へ)
③ 最後に足先から太もものつけ根まで、脚部を全体的になで上げる

また人間の身体には、多くのツボがあります。
鍼や灸での刺激によって不調の緩和を図る方法ですが、指でグーッと押すだけでもOK。
血行不良や冷えに有効なツボを刺激して、むくみの改善を目指しましょう。

・湧泉(ゆうせん)/血行促進
足裏の土ふまずの上部、足の指をグーっと握った際にくぼむ部分

・足三里(あしさんり)/足の疲れやむくみ、胃腸症状などに有効
すねの外側、膝の皿部分のすぐ下から指4本分離れた部分にある

・三陰交(さんいんこう)/肝臓、腎臓に働きを助けるほか、冷えの改善に有効
くるぶしの内側の一番高い部分から、指4本分離れた部分にある

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