ED(勃起不全)とは
EDとはErectile Dysfunction(エレクトル・ディスファンクション)の略で、勃起障害や勃起不全など男性特有の性機能障害を指します。
「性欲はあるのに十分な硬さにならない」「一度は勃起するものの途中で萎えてしまう」など、ペニスの硬さが不十分であるために満足な性行為ができなくなる病気です。
成人した日本人男性の約1,130万人がEDを発症しており、50~60代では2人にひとりがEDを患っているとされています。
「歳を重ねた男性はEDになるもの」だと考えられていますが、20~30代の比較的若い世代でも発症する可能性は十分にあります。
目次
EDの症状
50代以降の発症が顕著ですが30代でもEDになる可能性はあり、日本の成人男性の25%、つまり4人にひとりがEDを発症しています。
EDの度合いは軽度・中等度・完全と3段階に分けられ、年齢を重ねるごとに重症化する傾向にあります。
【軽度ED】
勃起が十分な硬さに達しない、硬さを維持できないことがたまにある
【中等度ED】
勃起とその維持が、時々できないことがある
【完全ED】
性行為のたびに、勃起とその維持ができない
高齢になるほどEDが重症化しやすくなるのは、勃起と血管のコンディションに深い関係があるからです。
正常な勃起には、ペニスへの血流が欠かせません。
ところが、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病になると動脈硬化が進み、血流が悪化してしまいます。
生活習慣病の発症は40代で急速に増加するため、EDの発症率も40代以降で大幅に高まりま
す。
ひとくちにEDと言っても勃起に関する悩みは1人ひとり異なり、現れる症状は主に3つのパターンに分けられます。
勃起するのが遅く、性行為の途中で萎える
性行為中に硬さが低下する・射精する瞬間まで勃起を維持できないといった弊害はあるものの、一度はしっかりと勃起できるためEDだと自覚されにくいのが特徴です。
挿入できるほど硬くなるまでに時間がかかるだけという場合も同じで、「たいしたことはない」と放置されやすく重度の症状に発展しやすいといった性質もあります。
以前よりも体力が低下している・生活習慣病になりかけているなど、身体に変化が現れやすい50代以上で多くみられます。
自慰行為(オナニー)では勃起するが、性行為では勃起が困難
自慰では硬くなるが、パートナーと行なう性行為では完全に勃起しないというケースもEDのひとつ。
コンドームを装着すると萎える、女性に挿入すると萎えるといった症状も同じで、性行為という限定された状況下で勃起できないのは、心理的な要因が大。
性行為に対して自信が持てないという20代やパートナーとの行為にプレッシャーを抱えている30代など、比較的若い世代で起こりやすい症状です。
自慰の際に、過度な刺激を与えすぎている男性も要注意。
ペニスが強い圧に慣れてしまって女性の膣内では物足りず、性行為では射精できなくなるのです。
自慰行為(オナニー)では勃起するが、性行為では勃起が困難
自慰や性行為などシーンを問わず勃起しない・十分な硬さに至らないといった状態は、もっとも自覚しやすいEDの症状です。
朝立ちの回数が減る、中折れしやすくなるなど、前触れのような症状を経て少しずつ悪化する場合があれば、急に勃起できなくなる事例も。
体調だけでなく精神状態(ストレス)が大きく影響するため、年代を問わず発症する可能性があります。
しかしいつも勃起できないことは、男性としての自信を著しく低下させてしまうだけでなくパートナーとの関係にとって大きな弊害。
ED治療薬による積極的な改善が必要です。
EDの原因
思うように勃起できなくなる原因はいくつかあり、たったひとつのきっかけでEDを発症することがあれば複数の要素が絡み合っている場合もあります。
EDの原因は主に、器質性・心因性・薬剤性・混合性の4種類に分けられます。
通常であれば、脳が感じた性的刺激や興奮は、脊髄神経を通してペニスへ伝わります。
1.脳で感じた刺激・興奮が、脊髄神経を通してペニスへ伝わる
2.陰茎海綿体へつながる血管や周辺の筋肉が弛緩する
3.ペニスへの血流量が一気に増える
4.陰茎海綿体が膨張する=勃起
しかし、神経伝達がうまくいかない・ほかの病気による血管障害が生じているなど、後天的な原因によってEDを招いてしまいます。
器質性ED
器質性EDは、血管や神経の損傷など、身体機能に支障をきたしているせいで発症します。
肉体が衰え始める年代で発症しやすく50代以上のEDで多くみられる要因ですが、若いうちから不摂生を続けてきた人であれば40代や30代でも器質性EDになるリスクはあります。
血管にトラブルを抱えている
もっとも典型的なEDの原因として、加齢による動脈硬化が挙げられます。
動脈硬化は文字通りに血管が硬くなってしまう症状で、簡単にいえば血管の老化。
生活習慣病や偏った食事、運動不足などによって引き起こされます。
・糖尿病
・高血圧
・高脂血症
・肥満
・喫煙習慣
・度の飲酒
若さを維持している血管はしなやかですが、老化が進んだ血管には弾力性がなく血液の流れが滞りがち。
スムーズに血液が流れない身体では、理想通りの勃起は難しくなります。
神経を損傷している
ペニス周辺で行なった外科手術の影響で、EDになってしまうことがあります。
一般的なのは、ガン治療のために行なう前立腺や膀胱の摘出手術です。
施術の際に血管や神経を損傷してしまうと、性的刺激を受けてもペニスに伝達されないため勃起に至りません。
この場合、手術を受けたという事実に対する心理的な影響も考えられるため、肉体と精神のどちらに原因があるのかを正確に見極める必要があります。
また脊髄損傷による神経障害や血管障害によって、EDを引き起こす場合があります。
男性ホルモンが低下している
男性の筋肉や骨格の発達に欠かせないホルモン・テストステロンは、30代から少しずつ減少していきます。
ホルモンバランスの変化によって勃起力や性欲そのものが低下するケースがあるほか、男性更年期障害(LOH症候群)が起こる場合もあります。
心因性ED
日常生活のなかで感じるプレッシャーやストレスなど、精神的な原因で起こるのが心因性EDです。
身体機能に異常はないもののメンタル面の不調によって引き起こされるため、20~40代の比較的若い世代に起こりやすいのが特徴です。
・女性に対するプレッシャー
・性行為への緊張感
・自分の身体に対するコンプレックス
・妊娠の不安
・仕事での心労
・人間関係のトラブル
・家庭環境に対する不安
ひとくちにストレスといっても原因はさまざまで、性行為に直接関わる心理的負担があれば、性行為とは無関係なストレスがEDにつながっているケースもあります。
うつ病やPTSDでEDになることもある
EDの背景には、自覚していない深層心理や過去のトラウマが隠れていることがあります。
ホモセクシュアルや女性に対する憎しみ、幼少期の体験など、極めて個人的な要因が大きく影響。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病、不安神経症といった精神疾患がEDを引き起こしていることもあり、どうして勃起できないのかという原因がどこにあるのか自分では気づけていない可能性もあります。
薬剤性ED
薬剤性EDは、持病の治療に用いている薬の副作用で起こる症状です。
若い世代では精神安定剤や睡眠薬による影響が多く、40~50代では降圧剤や高脂血症の治療薬を服用していてEDを発症したというケースが多くみられます。
薬剤によっては副作用としてEDが明記されていない・医師がEDのリスクついて説明していないことあるため、患者自身がEDの原因として気づけない場合があります。
EDを誘発する薬剤一覧
循環器系 | 中枢神経系 | 消化管系 |
利尿剤 降圧剤 血管拡張剤 不整脈治療薬 脂質異常症治療薬 |
消炎鎮痛剤 抗うつ薬 抗けいれん薬 向精神薬 |
抗コリン薬 消化性潰瘍治療薬 |
抗うつ剤や向精神薬による治療中の場合、EDは精神疾患の症状のひとつなのか・薬の副作用なのか、正確な判断が難しいところです。
薬剤性EDは、服薬を中止したり薬を変えたりすると改善できる場合があります。
しかし自己判断で減薬・断薬することは、治療中の疾患を悪化させる原因にもなりかねません。
EDの原因がハッキリとわからない時には、医師に相談したうえで最適な解決策を検討する必要があります。
混合性ED
器質性と心因性、どちらの原因も併せ持っているのが混合性EDです。
動脈硬化の傾向があるうえに心理的ストレスが重なって起こるケースで、60代以上の比較的高齢の男性に起こりやすいEDです。
加齢によって男性らしさが低下していくことで性行為に自信が持てなくなるため、器質性EDによって心因性EDを併発するというパターンも見受けられます。
EDの改善・治療
EDを根本的な意味で完治させることは難しく、「こうすれば治る」という明確な治療方法はありません。
EDの治療は、勃起しない状態を勃起できるコンディションに促すという対症療法です。
勃起の成功率を上げる方法としてもっとも多く選ばれているのがED治療薬の服用。
しかし、すぐに勃起できるようになることからEDが治ったかのように錯覚しがちですが、普段からEDの原因症状に向き合う必要があります。
「EDかもしれない」と心当たりがある人はすぐに解決策を検討し、早めに行動を起こしましょう。
ED治療薬を服用する
ED治療薬にはバイアグラ・レビトラ・シアリスの3種類あり、それぞれジェネリック医薬品も販売されています。
いずれも、EDの原因物質であるPDE5を阻害して勃起に必要な血流を起こすという働きは共通。
薬剤の特徴や違いは以下の通りです。
即効性や持続時間など、ライフスタイルや好みによって使い分けます。
商品名 | バイアグラ | レビトラ | シアリス |
有効成分 | シルデナフィル | バルデナフィル | タダラフィル |
形・色 | 青色、ひし形 | オレンジ色、円形 | クリーム色、涙形 |
即効性 (効き始めるまで) |
○ 服用から約30分 |
◎ 服用から約20分 |
△ 服用から1~3時間 |
持続力 (作用時間) |
△ 約5時間 |
○ 5~10時間 |
◎ 20~36時間 |
特徴 | 世界初のED治療薬。 強力な勃起力が得られる半面、副作用が出やすい。 |
第2のED治療薬。 水に溶けやすく即効性に優れているが、副作用が強く現れやすい。 |
世界シェアNO.1のED治療薬。 副作用が少なく、初心者にも使いやすい。 |
生活習慣を改善する
EDの発症や悪化を防ぐためには、血流を妨げる習慣を改める必要があります。
✔ 偏った食習慣(脂っこい食事が好き、アルコールの摂りすぎなど)
✔ 運動する習慣がない
✔ 喫煙している
✔ 睡眠不足、睡眠時間が安定していない
EDを増長させるライフスタイルを見直し、血流のよい身体作りを心がけましょう。
食生活を見直す
脂質や糖質が多い食事は、ドロドロ血液の原因です。
まずは、血流アップに役立つ食事を意識しましょう。
納豆(ナットウキナーゼ)
青魚(DHA、EPA)
梅干し(クエン酸)
緑茶、赤ワイン(ポリフェノール)
わかめ、昆布(アルギン酸)
カボチャ、ニラ、アスパラなど(ビタミンE)
ピーマン、小松菜など(ビタミンC)
節煙・禁煙する
食事の改善に続いて重要なのが禁煙です。
喫煙はスムーズな血流の大敵。スパッとやめることが望ましいですが、いきなりの禁煙はなかなか難しいものです。
できる範囲で我慢を続け、段階的に摂取量を減らしていってください。
筋トレを行なう
筋力の低下も血行不良の原因です。
人間は下半身に筋肉量が多いので、ランニングやスクワットといった下半身を鍛えるトレーニングメニューが効果的です。
運動習慣がない男性にとっては、筋トレがストレスや過度な疲労の原因になりかねません。
日常生活のなかで少しずつ歩く距離を増やす、軽いトレーニングを始めてみるなど、負担なく続けられることから始めてみましょう。
下半身に効く運動としてサイクリングが思い浮かぶかもしれませんが、自転車は要注意です。
長時間サドルに座り続けるとペニス周辺の血管や神経が圧迫され、EDを悪化させる可能性があります。
ICI療法(注射)を受ける
ED治療薬を服用できない事情がある場合には、ISI療法が選ばれます。
プロスタグランジンE1という成分をペニスに注入し、強制的に勃起を起こさせます。
ISI療法の勃起成功率は98%で、即効性の高さも大きな特徴です。
注射後5~10分で勃起がはじまり、30分後には硬さが最大限に達します。作用の持続時間は3時間ほどで、この間は射精しても勃起が持続。
EDだけでなく早漏の改善にも効果的です。
ED治療薬と同じでISI療法も自由診療のため、1回の注射で約10,000円の費用がかかるというデメリットがあります。