不眠症とは

「疲れているのになかなか寝つけない」「ぐっすり寝た気がしない」
睡眠不足という体験はほとんどの人が経験しているのではないでしょうか。一時的であれば気にする必要はないかもしれませんが、睡眠が困難な状況が週に2回以上、1ヵ月以上続いている、かつ日中の活動に影響が出ている場合は不眠症である可能性があります。

日本人(成人)の20%が不眠症の症状に悩まされており、およそ5人に1人が眠りに何らかの障害があるという報告があります。

不眠症の症状

ひとくちに不眠症といっても、症状には個人差があります。
症状は主に4つのタイプに分類され、1つの症状のみ現れることもあれば複数の症状に悩まされる場合もあります。

・夜なかなか寝付けない入眠障害

・一旦就寝するが夜中に2回以上目が覚める中途覚醒

・予定時刻の2時間以上早くに目が覚める早朝覚醒

・熟睡感が得られない熟眠障害

不眠症患者の割合

入眠障害

不眠症を訴える患者の66%はこの入眠障害とされ、患者数がもっとも多い症状です。
通常、人は眠ろうと布団に入れば数分程度で睡眠状態へと身体が移行し、自然に眠りに落ちます。

しかし入眠障害の場合、夜寝付くまでに30分~2時間以上かかってしまいなかなか眠れません。
このような状態が毎日続く事で睡眠時間が削られ、睡眠の質も悪くなってしまいます。

入眠障害は、主に精神的なストレスによって引き起こされていると考えられます。
ストレスによる緊張が自律神経の状態を狂わせてしまい、なかなか寝付けないという状況を引き起こしてしまいます。

中途覚醒

中途覚醒は、一度は寝付くものの、夜中に2回以上起きてしまう状況を指します。
睡眠というのは眠りの浅いレムと眠りの深いノンレムが交互に繰り返され、中途覚醒の場合はレム状態にある時に目を覚ましてしまいます。

睡眠が途切れるため、身体も脳もなかなか休めません。結果として疲れを翌日まで持ち越してしまい、大きなストレスを感じます。

中途覚醒の原因は、加齢や生活習慣だと考えられています。
年齢を重ねると睡眠維持能力が低下するため、眠りの浅い状態が増加し目が覚めやすくなってしまいます。
また寝酒の習慣がある人は、お酒によって交感神経を刺激してしまい、身体を覚醒状態へ近づけさせ充分な睡眠の確保ができなくなる場合もあります。

早朝覚醒

起床予定時刻の数時間前に早起きしてしまい、再び寝付くのが困難である場合は、早朝覚醒の可能性があります。

早朝覚醒の原因は、精神的な病気や加齢などさまざまです。
とくにうつ病は早朝覚醒を伴うことが多いため、明け方に目覚めてしまう人は心の病気を疑った方が良いかもしれません。

熟眠障害

熟睡障害は、いつも通りの時間に就寝、起床しているにも関わらず、ぐっすり眠った気がしないという症状です。

人は深い眠りによって身体や脳の疲れを解消し回復させます。熟睡障害は睡眠が浅く寝足りない状態となり、疲れがなかなか取れません。
それが長期間続けば身体や脳へ悪影響を与え、健康を害してしまいます。

熟睡障害は寝ている間に何らかの問題が生じている場合も。
就寝中に何度も呼吸が止まる病気(睡眠時無呼吸症候群)のほか、ストレスや寝酒なども熟睡障害の原因だと考えられます。

不眠症の原因

不眠症の原因は一つではありません。
ストレスや精神疾患、病気や加齢、環境など、不眠を引き起こす原因は多岐に渡り、内容にも個人差があります。

不眠症の原因

・ストレスや不安など心理的な原因
・病気やケガなど身体的な原因
・ホルモンバランスや睡眠リズムの乱れなど生理的な原因
・うつ病や不安障害など精神医学的な原因
・酒や煙草、医薬品など理学的な原因

何が不眠症の原因となっているのかを突き止め、それを取り除いていくことが不眠症を解消していくためには必要不可欠です。

ストレスや不安が原因

もっとも不眠症を招きやすいのが、ストレスや過度な不安といった心理的原因です。
仕事や日常生活で起こる悩みや不安、緊張、焦りなどによって寝付きが悪くなります。

・ 仕事で大きなストレスを抱えている
・ 人間関係で悩んでいる
・ 試験を控えて緊張している

人はストレスを感じると、起きている状態を保つ覚醒中枢と、脳を休息させる睡眠中枢のバランスが崩れ、覚醒中枢が優位になります
不安や緊張のせいで眠れなくなるのは、覚醒中枢が活発に働いてしまっているためです。

このような状態が続くと、「また眠れないのでは」と憂鬱になったり、寝床そのものがストレスの対象となったりして、さらなる不眠を招く場合もあります。
これらが原因である場合は、日常生活でのストレスをいかに解消できるかがカギとなります。
ストレスの解消や心身をリラックスさせる方法を見つけましょう。

体の病気が原因

体の病気によって不眠症を引き起こしている場合も少なくありません。
以下の病気は不眠を引き起こす原因となります。

・ リウマチ
・ 鼻炎・喘息・アトピー
・ 糖尿病
・ 高血圧
・ 心臓病
・ 腎臓病
・ 前立腺肥大など

リウマチなどの痛みを伴う病気や、鼻炎や喘息、アトピーによる苦しさや皮膚の痒みが原因で、「なかなか眠れない」「寝付いても夜途中で目が覚めてしまう」という症状に悩まされる人もいます。

また不眠と生活習慣病は密接な関係があり、糖尿病や高血圧患者の約半数が不眠症を発症している事が明らかになりました。
さらに心臓病による胸苦しさや腎臓病、前立腺肥大による頻尿も眠れない原因となる場合があります。

病気の症状が続く限り不眠症の根本解決が難しいため、病気の改善や緩和を目指す事が重要です。

ホルモンバランスが原因

加齢による睡眠サイクルの変化が原因となる場合もあります
年齢を重ねると睡眠を促すホルモン・メラトニンの分泌が低下し、寝つきが悪い、寝てもすぐに目が覚めてしまうという症状が起こります

また高齢者の場合は、若いころと比べて日中の活動量が減るため、必要とする睡眠時間も減っていきます。

加齢以外に、生活リズムの変化もメラトニン分泌の減少を招くことがあります。

・シフト制勤務
・受験勉強による昼夜逆転生活
・時差ボケ

睡眠は体内時計と大きく関わっていて、人間は体内時計の働きにより睡眠を促すメラトニンを分泌しています。
生活のリズムが大きく乱れると、メラトニンの分泌量が減少し不眠に繋がってしまうのです。

心の病気が原因

うつ病や不安障害などの心の病気は不眠症を伴っている場合があります。
眠れない日が続き、後になってから心の病気であった事に気付く人も少なくありません。

うつ病の場合は、睡眠ホルモンであるメラトニンの合成を行なうセロトニンが減少してしまいます。
身体的に異常は無いのにも関わらず不眠の症状がある場合は、心の病気が隠れている可能性があります。

もしうつ病などの疾患が見つかれば、抗うつ剤や抗不安薬などの投薬やカウンセリングによって不眠の症状を解消し、治療していきます。

医薬品や刺激物の摂取が原因

投薬が原因で不眠症を発症するケースも。
持病がある人にとって病気を治すための薬は欠かせませんが、常用中の薬の副作用によっては不眠症を発症する場合があります

・抗ガン剤
・自律神経・中枢神経に働く薬剤
・ステロイドを含む薬剤

常用している薬が不眠を招いている可能性がある場合は、主治医に相談してみましょう。

また、アルコールやカフェイン、ニコチンも寝つきが悪くなる原因です。
寝る前に飲酒をすると、就寝中にアルコールが抜けた時に脳が覚醒状態となり、「夜中に何度も目覚めてしまう」という中途覚醒を起こしやすくなってしまうのです。

ほかにもニコチンやカフェインは、交感神経を活発にし、脳を覚醒させる作用があり寝付くのが困難な状況を作ります。
良質な睡眠のためには、これらの刺激物を寝る前には避けましょう。

不眠症の改善・治療

不眠症を改善するためには、睡眠薬を使う方法と活習慣の見直しによって眠れる体作りを目指す方法があります。

症状の現れ方によって有効な治療方法は異なりますが、一般的には薬の力を借りながら生活習慣の見直しを実践し、不眠症を改善していきます。

睡眠薬を服用する

睡眠薬は、強制的に眠気を起こすタイプや睡眠ホルモンの分泌を促すタイプなど、薬剤によって働きが異なります。

効果的に眠れるようになるためには、抱えている不眠の症状と薬剤の効果を照らし合わせて、自分に合った薬を選ぶことが大切です。

寝つきを改善したい場合

スムーズに寝付けない入眠障害の人には、即効性の高い睡眠薬がおすすめです。

すぐに眠れるため、十分な睡眠時間を確保できるようになります。
また、「眠りたいのに眠れない」とイライラしたり不安に感じたりする時間をなくし、スッと寝つけたという自信をつけることで改善を目指します。

入眠障害に有効な睡眠薬

ハイプロン
ハイプナイト
ソクナイト など

朝まで睡眠を維持したい場合

夜中に何度も起きてしまう中途覚醒、朝目が覚めるのが早すぎる早朝覚醒には、睡眠ホルモンの働きを助ける睡眠薬がおすすめです。

ほかにも、作用時間が長めの睡眠薬をうまく使えば、短時間で目が覚めてしまうというストレスを減らすことができます。

中途覚醒・早朝覚醒に有効な睡眠薬

ロゼレム(睡眠ホルモンの働きを助ける)
ハイプナイト(深い眠りを維持する)

熟睡感を高めたい場合

十分な睡眠時間を摂れているはずなのに寝た気がしないという熟眠障害には、脳の働きを穏やかにする睡眠薬がおすすめです。

熟眠障害は、うつ病や不安障害といった心の病気が原因になっていることが多く、脳をリラックスさせることで改善できる場合があります。

熟眠障害に有効な睡眠薬

バスピン

生活習慣を改善する

人には体内時計が備わっていて、地球の自転による24時間サイクルの昼夜変化に同調しています。
睡眠も体内時計に大きく関与しているため、就寝・起床時間を一定に保つことはとても大切です。

就寝時だけでなく日中の過ごし方から気をつけることで体内時計を整え、安定した睡眠を目指します。

就寝時のポイント

・睡眠時間にこだわらない
不眠症は「寝なければいけない」というプレッシャーからさらに寝られなくなる場合もあります。
また睡眠時間には個人差もあるため、「○○時間眠りたい」と目標をあえて立てないこと。
どうしても眠気がないときは思い切って寝床から出ましょう。

・就寝前にパソコン・スマホなど操作しない
パソコンやスマホは日中の太陽の光に近いブルーライトを発しています。
そのため夜にブルーライトを浴びてしまうと、脳が昼間と誤認し、眠りを誘うメラトニンの分泌を抑え、眠りを妨げてしまいます。室内の蛍光灯なども同様です。
良質な睡眠のためには、就寝2~3時間前はパソコンやスマホを触らないようにし、部屋の照明を間接照明に切り替え、寝る体制を整えましょう。

日中の過ごし方

・太陽を浴びる
人は朝に起床し日光を浴びると、体内時計が動き出し、夜にかけて睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されます。メラトニンの作用により体温が低下し始め、起床から約14時間後には自然に眠気が生じるようになっています。
これは体内時計により調整されている人間本来の機能なのです。

不眠症改善のためには、体内時計のリズムを狂わせないよう決まった時間に寝起きし、日光を浴びましょう。

・短時間の昼寝をする
日中に眠気が起こった時は、午後3時までに30分以内の昼寝をすると効果的です。
ただし、長く寝すぎたり昼寝の時間帯が遅くなってしまったりすると、かえって夜に眠れなくなってしまうので注意してください。

・適度な運動を取り入れる
運動には睡眠を促進する効果があります。
軽めの運動で血流が良くなると、脳がリラックスした状態となり、適度な疲労感が加わることで寝付きが良くなります。

反対に激しすぎる運動は脳への負担が増えて眠りにくくなってしまうので気をつけましょう。

運動は1回きりではなく、習慣的に続けることで不眠に対して効果を発揮します。
就寝3時間くらい前の運動がとくに効果的で、負担が少ないウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動が良いでしょう。

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