痛風とは
痛風になると、ある日何の前触れもなく足の指の関節に腫れを伴う激痛が起こります。
通風発作、通風関節炎とも呼ばれる症状で、痛みは一度起こると数日から1、2週間ほど続きます。
痛みの原因は、体内に溜まった尿酸です。
尿酸が結晶化して関節に沈着すると、体の免疫反応によって炎症が発生。患部は、腫れや熱、痛みを伴います。
痛風患者の95%は男性で、30~50代にもっとも多くみられます。
女性患者が少ない理由は女性ホルモンに尿酸を排泄する作用があるからで、女性でも閉経すると男性と同じくらいの発症リスクがあります。
目次
痛風の症状
通風の痛みは「風が吹くだけでも痛い」と言われるほど。
痛みは、足首や手首、親指の付け根などで生じますが、ほどんとが足の関節で起こります。
痛むのは一度に1ヵ所だけで、同時に複数の部位で炎症が起こることはありません。
足の親指の付け根、足首、手首、足の甲、アキレス腱、ひざ、ひじ など
痛風と似た症状
痛風以外にも足や関節に痛みを生じる疾患があり、通風と間違えてしまうことも。
どんな病気であっても、治療するためには正確な診断が必要です。
痛みが現れたら、早めに医療機関を受診してください。
外反母趾 | 足の親指の付け根が突出しているように変形し、少しの痛みが出やすい。炎症が起こると赤く腫れ上がって痛風発作のようになる。 |
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偽痛風 | ピロリン酸カルシウムという結晶によって関節内で炎症が起こる。高齢者に多く男女関係なく起こるが、足首や膝に起きやすい症状が痛風発作に似ている。 |
回帰性リウマチ | 急に関節が腫れたり痛くなったりするが原因不明。男女に起きる症状で、尿酸値が稀に高いこともある。その場合医師でも間違える場合がある。 |
蜂窩織炎 (ほうかしきえん) |
皮下組織が細菌に感染し、皮膚などが腫れあがる。腫れる箇所によっては痛風と間違いやすいが危険な症状であるため早急な病院の受診が必要。 |
溶血性連鎖球菌感染での 壊死性筋膜炎 |
「ヒト喰いバクテリア」と呼ばれ、筋膜に感染し組織を急速に破壊していく。全身に痛みや腫れ・熱などが広がる。医療機関での緊急処置が必要。 |
ほかにも、変形性関節症や変形性腰椎症、関節リウマチなどは、足の関節に痛みが生じやすく痛風と間違えることがあります。
痛風の合併症
尿酸値の高い状態が続くと、通風以外の病気も引き起こしやすくなります。
・高尿酸血症
・糖尿病
・脂質異常症
・高血圧
・尿路結石
・慢性腎不全 など
通風と共にこれらの病気にかかると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血といった重大な病気に発展することもあります。
痛風の原因
結晶化した尿酸によって痛みを生じるのが通風ですが、血液中の尿酸量が増えすぎる病気を高尿酸血症と言います。
・高尿酸血症:血中の尿酸値が高い状態
・通風(通風発作):結晶化した尿酸によって激痛が生じる
血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断され、通風を発症するリスクも高いといえます。
しかし高尿酸血症になっても、すぐに不調が現れるわけではありません。
無自覚のまま進行し、ある日突然通風を発症することがあります。
高尿酸血症は、体内で増えすぎた尿酸が原因。
尿酸は食事から摂取したプリン体が分解されて作られるため、摂取するプリン体の量が多すぎると尿酸が排泄できず、体内に留まってしまいます。
また、過度な運動やストレスも尿酸値を高める要因だといわれています。
体内に溜まった尿酸は、結晶化して関節に蓄積していきます。
それを免疫機能である白血球が異物と判断して攻撃すると、炎症を引き起こして強い痛みが生じます。
プリン体を含む食品・飲料の摂り過ぎ
プリン体は生命活動に必要な物質で、体内で生成されています。
しかし、食事からの摂取量が増えすぎると分解後の尿酸が増えてしまうため、尿酸値が高い人は食事の内容に気をつける必要があります。
レバー類、白子、あん肝、イワシ、カツオ、干し椎茸や干物などの乾物、ビール など
野菜、果物、海藻、豆腐、鶏卵、チーズ、米やパンなど、焼酎・ウイスキー など
激しい運動やストレス
激しい運動やストレスも尿酸値の上昇に関わると言われています。
運動は運動によって汗をかくと尿酸値が急上昇します。
水分補給が不足すると尿酸値が高いままで下がらず、通風発作の要因となります。
また、ストレスによって心が張り詰めている状態はエネルギーの消費が多いため、尿酸が作られやすくなってしまいます。
肥満体形、ほかの生活習慣病
肥満体形や高血圧、糖尿病の人、またはリスクが高い人は、尿酸の排泄力が低下しているため通風の発症率も高まります。
また、通風を発症している人が高血圧や糖尿病などの生活習慣病にかかることもあり、相互に注意が必要です。
痛風の改善・治療
通風になってしまったら、まずは鎮痛剤を服用して痛みを抑えます。
数日~数週間ほど経って痛みが引いた後で、尿酸値を下げる薬の服用を始めます。
また、平行して生活習慣の改善も行なうことで、再発しにくい体作りを目指します。
薬で痛風発作の痛みを和らげる
目的 | 炎症を抑える | 痛みの発生を予防する | |||
分類 | 非ステロイド性抗炎症薬 | 副腎皮質ステロイド | |||
成分名 | インドメタシン | ナプロキセン | プレドニゾロン | メチルプレドニゾロン | コルヒチン |
代表的な商品 | インドメタシン | ナイキサン | プレドニゾロン | メドロール | コルヒチン |
鎮痛には非ステロイド性抗炎症薬を服用します。
ただし、通風の痛みは通常の用量では鎮痛できないため、他の症状で服用するときよりも多い量を1~3日間ほど服用します。(通風における服用量は、医薬品ごとに確認してください)
非ステロイド性抗炎症薬を飲んでも痛みがひかない場合や、短期間に通風発作を繰り返す場合にはステロイドを用います。
また、短期間のうちにたびたび通風発作が起きる場合には、コルヒチンを服用して通風発作を予防します。
薬で尿酸値を下げる
尿酸値を改善する薬 | ||||
目的 | 尿酸を作る働きを抑える (尿酸生成抑制薬) |
酸性尿をアルカリ性に近づける (尿アルカリ化薬) |
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成分名 | アロプリノール | フェブキソスタット | クエン酸カリウム | クエン酸カリウム クエン酸ナトリウム水和物 |
代表的な商品 | ザイロリック | フェブリク | ポトレート | ウラリット |
通風発作の痛みが治まったら、尿酸値を下げる治療を始めます。
痛風治療薬には、尿酸生成抑制薬と尿アルカリ化薬の2種類があり、症状や既往症によってどちらか1つだけ服用する場合と併用する場合があります。
尿酸値を上げないための生活を実践
・水分をたくさん摂る(1日2リットル以上)
・プリン体の多い食事や飲み物は控える
・腹八分目を意識
・塩分を摂り過ぎない
・適度な運動を続ける
服薬によって尿酸値が安定すれば通風の症状は治まっていきますが、発症前と同じ生活を送っていると再発してしまいます。
食事や運動習慣などを見直して、通風にならない生活を心がけましょう。